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たもとに注意
先週、新幹線で着物のたもとを座席の肘掛けにひっかけました。 立った瞬間、びりーっと音がして、「あぁ、またやってしまった」  新幹線でたもとを座席にひっかけたのは、実はこれが3回目です。 今までは単衣の着物で、たもとと身頃の縫い目がほどけただけだったし、 裏地がないからあまり目立たなかったし、 駅から帰宅するだけだったから、あまり問題はありませんでした。 でも、先週はそのまま銀座まで行かなくてはいけませんでした。 しかも、表地は丈夫で無事だったけど、裏地は破れているじゃない!

検札に来た若い女性の車掌さんに裁縫道具がないか聞いてみました。 けんもほろろに、「ありません。裁縫箱は車内に搭載していませんから」と言われました。 「針と糸だけでもあればいいのですけど、それでもありませんか?」と聞いたら、 「ないかもしれませんが、ちょっとあたってみます」と言ってもらえました。

しばらくして裁縫キットを持って来られたのは、やや年配の男性車掌さんでした。 損傷具合を見て、「あぁ、これでは場所を移して直す方がいいですね。 お部屋がありますから、案内します」と乗務員室まで案内してくださいました。 でも、ほころんだ前側は自分で縫えるけど、後側には手が届きません。 「申し訳ありませんが、手が届かないので、簡単でいいですから、後側だけ留めてもらえませんか?」と頼むと、 「いやー、私にできるかなぁ。裁縫の宿題はいつも母親にやってもらっていたのですよ」と言いながら、 おじさま車掌は針と糸を持ちました。 「さっきの女性は、もう来ないかなぁ...」と言いながら。

そこへちょうど通路に他の女性の車掌さんが通りがかって、バトンタッチしてもらえました。 後側を留めてもらったあとは、個室でゆっくりほころびを直しました。 案山子のように手を広げない限り、そんなに目立たなくなりました (と思っていたけれど、銀座の集まりでは誰か気がついていたのかなぁ)。

「3回も、たもとをひっかけて破いたのは私くらいでしょうね」と言ったら、車掌さんは笑っていました。 直したあと、座席に戻る時に会った最初の車掌さんは、「うまく直せましたか?」と声をかけてくださいました。 破れた時にはうんざりしたし、揺れる車内での針仕事には気分も悪くなったけれど、車掌さんたちのおかげで、暖かい気持ちになりました。 お世話になった3人の車掌さん、裁縫キットを貸してくださった方、ありがとう。
(2006年10月17日記)

使わせてもらった部屋と裁縫キット

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